平成28年版 犯罪白書の概要

犯罪白書

刑法犯の認知件数は減少傾向

平成28年版 犯罪白書による刑法犯の動向を見てみると、平成27年の一般刑法犯の認知件数と発生率については、認知件数が109万8969件にのぼっています。

しかし刑法犯の認知件数は近年は減少傾向が認められ、平成14年に戦後最多をピークにして以降、13年間連続での減少を見せています。平成27年には戦後最小の認知件数を記録しており、ピーク時の平成14年の4割弱に止まったこともあります。

各種の犯罪の動向

刑法犯の動向を見るために、各種の犯罪の動向について着目してましょう。犯罪動向を分析し対策の指針を検討するにあたっては、どのような犯罪事件が多く発生しているのか、被疑事実の犯罪の種別と近時に動向について把握することが重要になります。

窃盗犯

そこで一般刑法犯の発生率に着目すると、全体の80%弱にあたる80万7560件が窃盗犯が占めていることがわかります。認知件数全体に占める窃盗犯の割合が高いのは、わが国における一貫して見られる犯罪動向の特徴ですが、平成15年を境に減少しており、依然刑法犯全体の7割以上をしめているものの平成27年には戦後最小(前年比10%減)を記録しています。

振り込め詐欺

他方で振り込め詐欺や還付金詐欺などの特殊詐欺事犯は依然高いレベルで、被害が続出しており、平成27年では認知件数が1万3824件(前年比3.2%増)、被害総額は470億円(前年比16.3%減)に上っています。

この数字はオレオレ詐欺が社会問題化した平成23年に比べると、認知件数では1.9倍、被害総額では2.5倍に上っていることが分かります。単身高齢世帯の急増やPCや金融に関するリテラシー意識の低い高齢者が多数を占める高齢化社会の現状では、今後も特殊詐欺事犯の発生が見込まれると考えることが出来るでしょう。

再犯の現状

このように刑法犯の認知件数が減少する一方で、犯罪を繰り返す再犯犯罪者の存在が社会問題化していることを意識して、平成28年版犯罪白書では再犯の現状等についての特集を組み、再犯の現状を分析しています。

それによると刑法犯検挙人員の48%が再犯者でピーク時の平成18年から22.9%減少しています。しかしながら入所受刑者の59.4%以上を刑務所への入所が2回以上の再犯者で占められていることも明らかになっています。このようなことから、平成28年の犯罪白書においては、各種の犯罪者の性別や年齢、犯罪の種類に応じた多様な再犯防止施策の活用を提唱しています。

刑法犯の検挙率

それでは認知した刑法犯の検挙率についてはどうでしょうか。昭和中期以降、昭和60年くらいの期間では6-7割前後の検挙率で推移していましたが、平成元年以降は検挙率は急落し、一時は3割を割り込む年もありましたが、平成27年においては32.5%と依然低迷しています。実に認知件数の3分の1にも満たない数値です。

このような低迷の要因としては、核家族化や単身世帯の急増により地域のコミュニティ意識が希釈になり、近辺の変化も感知しずらい条件が社会的に醸成されていることも関係していると見られています。これからは認知件数に対する検挙率の回復が大きな課題になっていると言えるでしょう。